嫉妬


公園に行くと、幼稚園に上がる前ぐらいだろうか、小さい子たちが砂場で遊んでいた。

……いいなぁ。
そんな風に無邪気に遊べて。毎日遊んで食事して寝てそうやって過ごして、今が一番楽しいんだろうなぁ。まだ苦しいことなんか、何もなくて。

いいなぁ。


その近くではその子たちの母親と思われる人たちが、数人でおしゃべりをしていた。

……いいなぁ。
近所の人同士集まって、そうやって楽しく話せるだなんて。俺なんか近所に、そんな親しい人なんかいないってのに。

いいなぁ。


しばらくすると、スーツを着た中年男性がやってきて、ベンチに座って弁当を食べ始めた。

……いいなぁ。
ひょっとしてリストラされたのを家族に黙ってるんだろうか。心配かけたくないと、気にかける家族がいるだなんて。俺なんか一人で生活をはじめて、気を配らなきゃいけない相手なんていなくなったってのに。

いいなぁ。


おなかでもすいたのか、その男性の近くに鳩が集まってきた。

……いいなぁ。
恵んでもらえるとでも思ったんだろうか。そうやって自分の食事だけ考えられるなんて。生物としての欲求に忠実に生きる、楽な生活。

いいなぁ。


やがて鳩は飛び、公園の入り口にある電灯に止まった。

……いいなぁ。
昼は何もせず、暗くなれば明りを灯すだけ。無機物として、思考すらもなく、課せられたことだけを辛さも苦しさもなく実行するだけ。

いいなぁ。



結局この公園にあるものは、俺にとって、すべて羨望の対象なんだ。




嗚呼、ここがジェラシックパーク。


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