「おお、源内!」
あぁ、もういいよ。俺のことは好きに呼んでくれ。
「大丈夫だったのか? 間に合ったのか?」
俺は右腕を見せてやった。痛々しくも手術用の糸が埋まっている。
「何とかな」
「お~、よかったな。谷口がまだ学校に来てねぇから心配だったんだよ」
別にお前が心配しなくても大丈夫だよ。まだチャイムが鳴るまで時間はある。そのうち来るだろうよ。
「あ~、そういえばだな。古林カンカンだったぞ。後で怒られるだろうから、覚悟しとけよ」
それは破傷風だなんていう言い訳を使ったお前のせいじゃないのか?
「あんなん冗談に決まってんだろ。実際に言えるわけがねぇ。オレがとばっちりを受ける羽目になるのも嫌だったし、昼休みに気づいたら居なくなってた、って言ったよ」
酷いな、お前。俺とお前の友情はそんなもんだったのか。
「そんなもんだろ。大して深くもなく、かといって浅くもない。程好い感じのどこにでもあるような友情関係だと思うぜ」
その時、後ろのドアから谷口が教室に入ってきた。
「ほらな」
俺は何故だか得意げになった。
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