そろそろ寝ようと思い欠伸をしながらベッドに入ろうとすると、携帯が鳴り響いた。まったく、こんな夜遅くに電話してくるなんてちょっと非常識じゃないか?
「もしもし?」
電話の相手は谷口だった。まったく、もう日付が変わってしまっているというのに。
『夜遅くにゴメンね。あのさ、明日プリント……』
「古典のプリントだろ? もう用意してあるよ」
『それもなんだけど、明日化学のプリントも返してくれないかな?』
「……マジで?」
『マジで。よろしく! じゃ、おやすみ~』
切られた。
仕方なく眠気をかみ殺し、俺は再び机に向かった。まったく、やっと古典のプリントを写し終えたというのに。しかも化学は苦手だから、頭を使わなければならない。ただ写すだけならすぐにでもできるのだが、ちゃんと内容を理解しないとまた赤点を取りかねない。
いや、やっぱ考えるのは後日でいいか。とりあえず今は眠い。明日の朝も早いのだ。仕方ないので、ぱっぱっと写して早く寝てしまおう。
五分でさっさと写し終えた。何も考えずに無心でただ書き写しただけだからな。
しかし何故、化学も明日に返せなんて言い出したんだろうな。別に明日は土曜なんだからわざわざもって行く必要性も高くはあるまい。
俺はベッドに入った。暗い部屋で、俺は目を閉じる。
――まぁ、もしかしたら、アレかもな。
今日のうちに、読んでおいてほしかったのかもしれない。
化学のプリントの裏には、小説のネタなのかどうかは測りかねるが、古典のプリントと同じように小さく文字が書かれていた。
私の不安はすっかり拭われた。ありがとう。面と向かって言うのは何だか照れくさいので、こうしてプリントの裏に書いておきます。
バカヤロウ、礼を言わなくちゃならんのは俺のほうだぜ。
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