射止めろ!石油女王 05


「さて、反省会をしましょうか」

 安澤と二人。駅前のファストフード店でそう切り出される。俺の手にはコーラ、安澤の手にはホットコーヒー。コーヒー飲めるのってカッコいいよね。あんな苦いの、俺はとてもじゃないけど飲めないよ。

「ふっふっふ、果たして今回、俺に反省すべきポイントがあるのかな?」

「あるわ! 大アリだわ! ……まあ今回は、お前が全面的に悪いワケじゃないけど」

「『今回は』ってなんだよ? 今までに俺が100%悪かったケースがあるみたいな言い方しないでもらえる?」

「あったよ。そういうケースは多々あったよ……」

 コーラを一口飲む。なんか薄いな。氷なんか要らないのに。

「まず一つめ」

「そんな言い方されると、俺の反省点がたくさんあるように聞こえるから、辞めていただきたい」

「たくさんあるから、こんな言い方してるんだよ」

 分かりやすく、右手をグーにして出してくれて、指を一本立てる。この分なら、まあ多くても片手で数えられるくらいかな。でも普通こういう時って、人差し指を立てるもんじゃないのか? なんで親指を立てたんだ?

「早稲田のOBって嘘ついたよな。お前の大学、山梨じゃねえか」

「その言い方、山梨をバカにしているように聞こえます。辞めていただきたい」

「別にしてねえよ! むしろ偽ってるお前の方が、山梨をバカにしてんじゃねえかよ!」

「わにわにしてーて、なんちゅーわからんじんずら!」

「……拓真、頼むから標準語で喋ってくれ」

 山梨の学校に通っていたことを、何ら恥じていることはない。恥じていることはないのだが、どうしても俺の中では、山梨出身が玉の輿に乗る、というイメージがどうも湧かないのだ。百歩譲って玉の輿は諦めるとしても、都会のイカした女を捕まえるには、パンチはあってもクリティカルヒットに成り得ない。
 さてどうすればいいか。そう、都会のオシャレな私立大学だ。早慶上理、いい響きじゃないか。

「次。広告代理店に勤めてるとか言ってたよな?」

 そう言って、今度は人差し指を立てた。それと同時に、親指を下ろす。

「2進数だと!?」

「五つで足りるかバカヤロウ!」


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