はっきり言って、谷口の教え方は上手だった。バカな俺でさえ、教えてくれた内容の半分ほどは理解できたんだからな。コイツは教員を目指してもいいんじゃないか? 少なくとも今俺たちに数学を教えているバカ教師(名前は覚えていない)よりは絶対にいいね。アイツより分かりやすく教えられるんだからな。
「……となるからiが……となって……となるわけ。分かった?」
何となくは。とりあえず課題が終わったから万事オーケーだ。
「源内さんは絶対文系って感じだよね」
まだその名前で呼ぶのか。もういいよ、慣れたよ。あなたなんて代名詞で呼ばれるよりかはマシかもしれないしな。
「化学も数学も赤点取っているようじゃぁ、理系なんて絶対行けっこないもんね」
世界史も赤点でしたがね。ちなみに言わしてもらうと古典も赤点スレスレだ。
「数学も国語もなんだって万能にできるお前は、理系文系どっちなんだ?」
「私は文系だよ。進路も文学部だし。ほら、小説家志望だから」
なるほど、そんなに数学できるのにもったいないぜ。
「しょうがないよ。何でもかんでも万能にできたって、将来役に立つのはそのうちのほんの一部分だけなんだから。もし数学の道に進んだとしたら、国語とか歴史とかはドブに捨てちゃうようなもんなんだから、どっちにしたって同じなんだよ。勉強ができる人間だって、自分のやっていることが将来役に立つかどうかを疑っているもんだよ」
歴史も数学もない俺には、どうしようもないのか。
「頑張りなさい」
うるせぇ。
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