「源内さんは、帰宅部だよね? 中学のときは何かやっていたの?」
何日か谷口と話すようになって、いつものパターンというのが掴めてきた。
基本的に話題の提供は俺。谷口はそれに相槌を打ったり少しだけ意見を言うというケースが多い。俺は吐き壷を見つけ、谷口は小説の材料のための情報供給源を得る。そういう利害一致を俺は見出していた。だが時々、谷口の方から話題を提供してくることだってある。今回がそうだ。
そしてその話題の元は、ほとんどが本からなのだ。読んだ本に対して感動を抱くのかどうかは知らないが、興味を持ち、そのことを俺に訊いてくることがあるのだ。何の本かも教えてくれるのだが、俺の脳はあまりその情報を重要視していないらしく、教えてもらった三秒後にはすっかり忘れ去ってしまっているのだ。読書好きというわけでもないしな。この辺りも、俺が勉強できない要因の一つなのだろう。
「中学のときは、一応バスケ部だった」
俺のいた中学では、やたらと部活動参加率が高かった。別に強制というわけではないが、おそらく場所が田舎だったので帰宅部でも特にすることがないという人間がほとんどだったのだろう。俺は中学に入学してすぐに、同級生の飯島に誘われてバスケ部に入った。やたらと厳しい部活で、何度辞めようと考えたことか。ちなみに俺を誘った張本人の飯島は二ヶ月で退部しやがったが。
「そんなに辛いなら、何で辞めずに続けたの? 試合で活躍できたとか?」
いや、先輩たちが引退するまでは試合に出ることはできなかった。期待されるような新人ではなかったし、才能に恵まれていたわけでもない。
「ふーん……そうだ、ちょっとその実力見せてよ」
「へあ?」
予想外の発言に、思わず気の抜けた返事をしてしまった。
「私の家の近くに公園があるんだけどさ、そこ、バスケのゴールがあるの。さ、早く行きましょ」
「え、今からか? 別にいいけど……ボールはあるのか?」
「ウチにあるわ。私のお姉ちゃんが、中学のときバスケ部だったのよ」
こうして、俺と谷口はその公園に向かった。谷口は徒歩で通学しているので、俺が自転車の後ろに乗せてやった。生活指導の教師なんぞに見つかりでもしたら、そりゃぁもうすごい勢いで怒られるんだろうな。テストの追試やら課題やらでストレスが溜まっているというのに、勘弁してほしいもんだぜ。
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