それから俺たちは、時々だが、休日に二人でどこかへ行くようになった。さくら公園を待ち合わせ場所にして。小説のネタに使いたいからと谷口は言うが、俺はそんなのどうだってよかった。俺は谷口とどこかへ行くということを楽しんでいたからだ。クラスの女の子と二人きりでどっかに出かける、そのことだけでいい気分がする。誰だってそうだろ?
それでその道中は、俺の過去やそれに対する俺の考え方などを終始話しているのだ。中学のときのこと、高校の今のこと、俺が一方的に話しているだけだが、谷口はそれで楽しそうだったし、俺も楽しかった。
「なんか、いっつも俺ばっか喋ってっけど、いいのか?」
「いいよ。源内さんの話、面白いし」
「時々、お前に申し訳ないような気がするんだよ。俺の考えとかをダラダラと要領も得ずに話して、何が言いたいのか、言っている俺でさえよくわかってないし」
「いいよ、それで。うまいこと文にするのは、私の仕事」
「俺のことを小説にしているのか?」
「そうじゃないけど、源内さんの考え方を当てはめたりすることはよくあるよ。だから源内さんの考え方を聞いてて楽しいと思えるんだし」
俺にとっては、はっきり言ってどうでもよかった。俺が重要視していたのは、谷口が俺の話を退屈と思わずに、楽しく聞いてくれているという一点のみだった。
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