県民の日からそのまま週末へと休日は続き、三連休ののちに月曜日が来たが、俺は学校に行かなかった。怖くて行けなかった。
その翌日も学校へ行きたくなく、部屋でサボる決意をしつつベッドでゴロゴロしていると、母親が部屋に入ってきた。
「今日も学校休むの?」
「…………」
「……アンタも、あの子みたいになっちゃうの?」
その言葉を聞いて飛び起きた。母は『あの子』とぼかして言ったが、俺にはそれで通じた。『あの子』というのは兄のことだ。間違いないね。
結局、俺は兄が大嫌いなのだ。同類にされたくないのだ。このままずっと学校へ行くことをためらっていたら、結局兄とやっていることが同じではないか。そんなのは死んでも避けたいことであったので、俺は四日ぶりの学校へ出向いた。
もう完全に遅刻の時間……というか既に一限の授業が始まっている時間だったが、同類になりたくないというコンプレックスを杖代わりにして、俺は制服に着替えた。
「行くのか?」
兄の部屋の前を通ったときに、中から声が聞こえてきた。
が、このときの俺は何故かいつもと違う精神状態にあって、それをいつものような独り言と捉えなかった。俺に向かって話し掛けてきた、問いかけた、俺は勝手にそう解釈した。
「行くのか?」
兄が同じ言葉を繰り返して言った。
「ああ」
「俺は優しすぎた。お前みたいに器用に立ち回れなかった」
知らねーよ。別にお前が引きこもりになった理由なんぞに興味はない。
「お前ならできる。他人に噂されようとも関係ない。お前は誰からも好かれることなんて考えなくていい」
俺はそれ以上兄の言葉に耳を貸さず、既に授業の始まっている学校へと向かった。
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