不健康な人達 27


 期末試験が終わり、俺たち高校生は夏休みという期間に突入した。
まだ俺は高校二年であり、受験勉強などに追われる身分ではないので、清々しい気分であった。来年の夏休みはこうはいかずに、きっと漠然と勉強をしているのだろう。特にこれといって進みたい分野があるわけではないが、ただ漠然と大学に行きたいとは考えている。親の負担を軽くするために国立大学へ。兄はあんなだし我が家は片親で母が一人で家計を支えているのだから、少しでも俺だって貢献すべきだろう。本当に貢献しようと考えているのならば大学などに進まず就職するのが良いのかもしれないが、そこは、ほら、アレだ。そのぐらいの我がままは認めてやってくれ。男は大抵、就職したら定年を迎えるまで働き続けるわけじゃないか。そう思うとぞっとするじゃないか。これから四十年近く働き続けるなどと考えたら鳥肌が立つ。せめてもう少し、学生という身分でいたい。特に俺は就きたい職業があるわけではないので、なおさらそう考えてしまうのだろう。正直に言えば、俺は兄みたいに生きたいとも思うのだ。勉強もせず働きもせず、好きなことだけやって暮らしている。素晴らしいじゃないか。ただ俺がそれを実行に移さないのは、俺がまだ善良的な心を持っているからだ。それを実行すれば確実に迷惑を被る人間がいるのだ。それに、俺が後ろ指を指されて『ほら、あの人引きこもりでニートなのよ』などと噂されることになったりしようものなら、俺は自殺しちまうね。そういう社会の冷酷な目にも俺は耐えられない、繊細な心を持っているのさ。
 とまあ話を大分脱線させてしまったが、無事に俺は夏休みを迎えられたのだ。中間で赤点を取った科目も、期末試験で何とか挽回してみせた。特にこれといったやるべき決意もなく、まあ強いて言うとすれば、ダラダラと無気力に過ごしてやるという決意が体中を漲っていた。ビバ無気力。やるべきことがないことはよきことかな。


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