不健康な人達 44


 俺は頭を下げた。いや、頭を下げるくらいじゃ足りないな。そう思って、俺は土下座をした。フローリングの床に額をこすりつけた。

「すまん!」

 そうだ、俺は谷口に謝りたかったのだ。急いでここに来たのは西原にぶん殴られたからだが、それは過程に過ぎない。自殺を食い止めることが目的ではないのだ。自殺されたら謝れないからな。おそらくそうなのだ。

「……俺が悪かった。一方的に俺の責任だ。こんな身勝手な俺を許してくれ、とは言わない。許してくれなくてもいいから、ただ謝らせてくれ。悪かった!」

 謝らなければ気がすまなかった。俺が谷口にしたことは、こんな土下座なんかで償えるものではないとわかっている。それでも、謝らなければならない。谷口も許すかどうかは別にして、俺が謝るべきだということは理解してくれているだろう。

「……無断で学校早退」

 谷口が言った。俺は頭を下げ続けているので、どんな表情をしているのかはうかがい知ることができない。ん、早退?

「……信号無視、住居不法侵入」

 なおも谷口は言葉を続けた。

「……私の多大なる精神的苦痛。……どうする?」

 どうする、と言われてもなぁ。どうしようもないと思ったからこうして土下座をしているのだが。陳腐な方法だとは思うが、俺にはこれ以外思い浮かばない。別に許してくれなくても仕方ないとは思っている。

「……すまん」

「すまん、じゃなくてさ。……顔を上げて。上げなさい」

「……『すまん』しか言えないの?」

「……すまん」


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