俺は頭を下げた。いや、頭を下げるくらいじゃ足りないな。そう思って、俺は土下座をした。フローリングの床に額をこすりつけた。
「すまん!」
そうだ、俺は谷口に謝りたかったのだ。急いでここに来たのは西原にぶん殴られたからだが、それは過程に過ぎない。自殺を食い止めることが目的ではないのだ。自殺されたら謝れないからな。おそらくそうなのだ。
「……俺が悪かった。一方的に俺の責任だ。こんな身勝手な俺を許してくれ、とは言わない。許してくれなくてもいいから、ただ謝らせてくれ。悪かった!」
謝らなければ気がすまなかった。俺が谷口にしたことは、こんな土下座なんかで償えるものではないとわかっている。それでも、謝らなければならない。谷口も許すかどうかは別にして、俺が謝るべきだということは理解してくれているだろう。
「……無断で学校早退」
谷口が言った。俺は頭を下げ続けているので、どんな表情をしているのかはうかがい知ることができない。ん、早退?
「……信号無視、住居不法侵入」
なおも谷口は言葉を続けた。
「……私の多大なる精神的苦痛。……どうする?」
どうする、と言われてもなぁ。どうしようもないと思ったからこうして土下座をしているのだが。陳腐な方法だとは思うが、俺にはこれ以外思い浮かばない。別に許してくれなくても仕方ないとは思っている。
「……すまん」
「すまん、じゃなくてさ。……顔を上げて。上げなさい」
「……『すまん』しか言えないの?」
「……すまん」
←前のページへ 次のページへ→
戻る