不健康な人達 46


 俺はことの経緯を全て谷口に話した。なるべく端折らず、事細かに説明した。一緒に空港に行ったのを板橋に目撃されたことから、夏休みに谷口を避け続けたこと、兄と西原に諭されてこうして謝りにきたことなど、全てを話した。

「……で?」

「いや、それで終わりだが……」

 谷口はまだ俺に何かを求めているようだ。話は一通りしたと思うんだが。

「別に、私のことを嫌いになったとか、そういうんじゃないのよね? 他の人に噂されたくないから、ただ避けていただけなのよね?」

「……うん」

「じゃぁ、まずは一安心だわ」

 谷口は俺の今までの行動に、とりあえずは納得してくれたようだ。俺も少し安心した。

「……でも、」

 でも? やっぱこれだけでは終わらないよな。

「でも、私は今の今まで不安だったの。とても怖かったの」

 そう言って、谷口は包帯の巻かれている左腕を俺に突き出した。

「……このままだったら自殺しようとも思った」

 やっぱりリストカットだったんだ。自殺を企んでいたんだ。もし俺が今日谷口と会わなかったら、本当に取り返しのつかないことになっていたかもしれないな。

「……悪かった、すまん」

「うん。『すまん』以外にもさ」

「ごめん」

「…………」

 俺は国語の成績だってあまりよろしい方ではない。はっきり言ってバカなほうだ。こういうときに俺は何と言えばいいのかわからない。これ以外の謝り方なんて思い浮かばなかった。俺は谷口と違って、あまりボキャブラリーが多くはないのだ。

「……うまくは言えないけどさ、悪かったと思ってる。本当に」

「…………」

「あー、何て言えばいいんだろうな。俺が今まで厚顔無垢だったのは恥ずべき――」

「厚顔無恥ね」

「あー、うん。厚顔無恥だったのは恥ずべきことだ。許してくれとは言わない。厚かましいか――」

「嘘つき」

 またも谷口は言葉を遮った。嘘つきだと?


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