廊下で、板橋と遭遇した。
「おう、源内さん。久しぶりだな」
まったくもって久しぶりだ。前に話した時からもう三ヶ月近く経っているし、あの時だって久しぶりと感じたような気がする。中学でもそれほど仲が良かったわけではないし。
「おう」
無視するのも、感じが悪いだろう。俺は当たり障りのないように声を掛けておいた。
「……お前、彼女とうまくいってんのか?」
うーん、どう答えたものかね。別に谷口が彼女というわけではないのだが、わざわざ否定するようなことでもあるまい。
「ぼちぼちだな」
またコレで一つ嘘をついてしまった。しょうがない、人間は嘘をつく生き物なんだからな。どれが嘘でどれが本当なのかをうまく見破れないと、以前の俺みたいな酷い状態に陥ってしまうぞ。俺はもうあんなヘマは踏まない。まぁ今俺が言ったような嘘は、鵜呑みにしても大して困りはしないと思うが。
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