そのままあたしも未亜の家にお邪魔して、ワープロのセッティングを手伝うことにした。
女の子らしくない、と言ったら失礼かもしれないけど、余計な物があまりない。実に機能的な部屋に置かれた机の上に、景品が鎮座される運びとなった。とはいっても、パソコンじゃなくてワープロ。何も仰々しく書くほどのことじゃない。あたしたちのしたことと言えば、机の上にあったノートやら筆記用具やらを片付けて、そこに戦利品を設置し、コンセントを接続しただけ。
電源をオンにするときちんと画面が光って、動いていることが確認できた。売れ残りといっても、さすがに不良品ではなかったみたい。六畳の部屋に新しい世界の扉が開いた瞬間だ。インターネットには繋がってないけど。
「……でも、何をしようかな?」
ぼそっと未亜が呟く。あたしの家にあるパソコンと違って、このワープロは機能が少ない。ワープロなんて、きっとみんなそんなもんなんじゃないかな。分厚い説明書に目を通してみると、なにやら文書を作る以外にも、住所録や簡単なトランプゲームぐらいは入っているみたいだ。
ここでひとつ、あたしは提案してみることにした。
「そうだ、未亜も小説書いてみてよ!」
「私が、小説……?」
あたしはいつも小説を読んでもらっているけど、他の人が、未亜が、どんな風に小説を書くのかってのを読んでみたい。自分で作ってるだけじゃダメだ。独りよがりな作品しか書けてない気がする。……だから今まで全部、一次選考で落とされてきたんだろう。未亜ならきっと、あたしより面白い話を作るに違いない。
「……うん、せっかくだから、書いてみようかな」
やる気になったみたい。よかった、同じ書く仲間がいた方が、楽しいし、タメになる。
「じゃあ、書けたら、由愛は読んでくれる?」
「いいともっ!」
左手のお父さんを立ち上げて、そう応えた。
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